庄司ゆうこの『My Revolution』
今回皆さんにオススメしたいのは2010年10月21日発売、庄司ゆうこさんのデビューアルバム『Thanks Key』です
中身は庄司さん自身がリスペクトする楽曲を集めたカバーアルバムになっています。
とりあえず一曲聴いてください。
ビックリしたんじゃないでしょうか、
この世界観。
「カラオケかよ」と揶揄された楽曲は数多あれど、
この境地までたどり着いたものはそうそう無かったのではないでしょうか。
テクニックや感情表現を必要最低限の部分まで完璧に削ぎ落とした歌声は今やボーカロイドでも踏み込めない領域に達しています。
Apple Musicに登録されている方であれば全曲聴くことが可能ですので
是非聴きながら読み進めてください。
楽曲を歌う庄司ゆうこさんは元グラビアアイドルで、現在は 2018年「セクシー個室ヨガ」として話題になった株式会社ポジティブスターヨガの代表取締役を務める実業家になられています。
これだけ広大なネットの海の中でこのアルバムに関する情報がほとんどないため、Amazonの「商品の説明」を確認してみます。
このアルバムは彼女や彼女のファンにとって待望のデビューアルバムだったようですが
現在に至るまでセカンドアルバムの情報は届いていません。
そして曲目を見てみると一つのトリックがこの内容紹介に含まれていることに気付きます。
皆さんは気づかれたでしょうか。
そうです。
このアルバム、内容紹介で「自身がリスペクトする80年代の名曲をカバー!」
と謳っていますが、
収録曲にほとんど80年代の曲がありません
こんな事あります?
世に作品を出すっていう行為の中で
10年弱経ってもこの間違いが訂正されずに残ってやんの。
堪らないですよね。これを見つけた瞬間グッとこの作品に引き込まれました。
私がグッと来たポイントはまだあります。
一枚のカバーアルバムの中に同じ歌手の曲が複数含まれていることです。
これはhitomiの楽曲で
こっちは広末涼子の楽曲です。
もう一度言います。
こんな事あります?
10曲しかない曲目の中で
各2曲が同じ歌手の曲。
カバーアルバムは「この歌手をフィーチャーした」とかでなければ男女関係なく様々な歌を聴かせるよう全曲違う歌手から選曲するのが定石だと思っていたので
こんな選曲は目から鱗、固定概念に囚われている自分に恥ずかしさすら覚えました。
「いやそれは『自身がリスペクトする』曲をカバーしたんだ」と指摘される方もいらっしゃるかもしれませんが、5曲目の『MajiでKoiする5秒前』を聴いてみてください。
冒頭の「1・2・1 2 3 4!」を言わないんです!
この曲を歌うとなってどこが一番やりたいかって言ったら間違いなく「1・2・1 2 3 4!」の部分じゃないですか。
ここをやるから「あ、私はいま広末涼子なんだな。」って思える筈なのに、これを言わない人がこの曲をリスペクトしてると私には思えないのです。
私なら言います。そこだけ言えればあとは歌わなくてもいいなと思うくらいです。
調べれば調べるほど「何故このアルバムは作られたのか」と考えてしまいます。
ここから少し深イイ話みたいな雰囲気に持って行こうと思うので聞いていて下さい。
彼女のWikipediaを見るとこのアルバムが発売された2010年は彼女にとって変化の年でした。
2月にヘアヌード写真集を出し、
グラビアアイドルとしてやれることはやり尽くしたと感じていた頃ではないでしょうか。
「このままではいけない」そういう思いからなのか、その年の6月に彼女はヨガのインストラクター資格を取り、
10月には渋谷にヨガの教室を開設します。
2012年にグラビアアイドルを引退した後も続く
本業のヨガの世界に足を踏み入れた
彼女にとってターニングポイントとも言える
タイミングで制作されたのが『Thanks Key』でした。
これを踏まえて8曲目の『My Revolution』を聴いてみて下さい。
これを聴く時に是非実践して頂きたいのは
アルバム1曲目から飛ばさずに聴いて辿り着いてほしいということです。
『My Revolution』は8曲目ですから、ここに辿り着く頃にはかなり意識も朦朧としてきていて、正常な判断が出来なくなっている頃だと思います。その状態でこの曲が始まって彼女が歌い出すと
「イイじゃん、コレ!」の一声が出てくると思います。
少なくとも他の曲に比べて感情が乗っている感じはするんじゃないでしょうか。
彼女にとってグラビアアイドルから実業家へ転身する「革命」を起こした
そのタイミングで収録された『My Revolution』
周囲に求められている今後の人生ではない、
「自分で明日を掴むんだ」という思いが歌声に乗ったこのアルバムのハイライトに推したい一曲です。
このアルバム、全編を通して
聴いていられない感じの歌が続くので
私が実践した気の紛らわし方を最後にお教えします。
ご自宅にあるアジシオ
を片手(備蓄があれば両手)に持ち、
マラカスの要領で振りながら聴いてみて下さい。
一気に「友達とカラオケに来てる感」が出ます。
ただ注意が必要なのは、その時は面白いんですが、後でどっと虚しさが押し寄せてくる事だけ気を付けて頂ければと思います。
いかがだったでしょうか。
普段手に取らないようなモノに思い切って手を伸ばしてみると予想だにしない驚きに出会えることがあります。
手を噛まれる事になると分かっていても敢えて自分から手を出して見る事で
後で笑い話にする事もできる。
それはそれで無駄ではないと思うのです。
皆さんもどうしようもなく暇な時は
このアルバムを聴いてどうしようもない気持ちに浸ってみて下さい。